作文をはじめとする文章について
個人の感覚に属する範疇にあるので
指摘されることは少ないのですが
文章そのものがもつ「熱さ」そして
「冷たさ」と呼べるものがあります。
伝えたいことと、伝えたいひと。
書き手がどちらにより近く立っているか
で、文章が「熱さ」をもっているのか
反対に「冷たさ」を纏っているかが
読んでいるうちにわかってきます。
伝えたいことに近いときは「熱さ」。
読み手に近いときは「冷たさ」と
概ね、こういうことができます。
ひとつの書籍、作品が「熱さ」
だけで書かれることは少なく
「冷たさ」のある文章とで
構成され、自然と読み手が
息をつけるようになっています。
「熱さ」だけの文章があれば
空気循環のない密室で、ラー麺を
味わっているようで、自ずと
ページはパタリと閉じられます。
「冷たさ」だけの文章も
味のわかりきっているお冷だけ
出されて、待たされつづけるようで
注文した品が出されないうちに
そそくさと、お暇してしまいます。
この文章の「熱さ」「冷たさ」を
利用して、本編を読んでいない書籍が
自分にとって面白い本かそうでないかを
数分で、判断することができます。
本の【あとがき】です。
「冷たさ」のある文章で
最後までお供をしてくれた読者に
「熱さ」のある文章で構成された
本編の内容を、もう一捻りして
ちょこっと、再解釈してくれる。
著者によるこのような
丁寧なサービスがあり
読者としての自分が
書き手のいわば「親心」に
触れることができれば
その書物は、いつか時間をとり
ひとりじっくりと読んでみる
価値が十分あるものと判断できます。
著者による【あとがき】にあわせて
他者による【解説】を先に読み
「冷たさ」のある文章で書かれた
解説のどこかに、「熱さ」の思わぬ
味わい方が記されていれば
やはり、手にとったその本を
最後まで読んでみる価値があります。
話が前後して、申し訳ありません。
はじめて手にした書籍はすべからく
書籍の奥付(発行日などが記されている頁)と
あとがき、解説の頁へ真っ先に目を通します。
結末を知らずに楽しむ部類の
書籍は、この限りではありません。
掟破りの【あとがき】もありますから
どうぞ、しっかりとご注意ください。
最近の読書で、実例をご紹介します。
【あとがき】で完読を保証された書籍に
『近現代日本史と歴史学』 成田龍一著 中公新書
この書籍は、【まえがき】も素晴らしいです
【まえがき】で完読を保証された書籍に
『非線形科学』蔵本由紀著 集英社新書
【解説】で完読を保証された書籍に
『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子著 文春文庫
などがあります。
いずれも「冷たさ」のある文章で
「熱さ」のある文章を味わう方法を
ちょこっと教えてくれる
独特の小気味よさがあります。
昨夜 庭前 葉に声有り
陶陶と読書を楽しむ秋が
すぐそこまでやってきています。
暑さの残るこの時期、書店や図書館にて
「冷たさ」のある文章に、ちょこっと触れ
秋のお供になる一冊を、探してみてください
http://gakudou.kankendo.com
国語の学童 よみかきのもり 公式HP
メールで国語の健康診断をお届けします。
まずは、教室までメールをお送りください
gakudou@kankendo.com
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